矯正治療は患者さんそれぞれのお口の状態に合わせた診断が必要です。そのためには事前にしっかりとした診査を行う必要があります。
■ レントゲン写真1(パノラマ) |
![]() |
■ レントゲン写真2(側貌セファロ) |
![]() |
■ レントゲン写真3(正貌セファロ) |
![]() 【1】歯の位置的な問題でずれている場合 【2】下あごや上あごの骨が変形している場合 【3】下あごが噛んでくる動作の中で、歯が不正な位置にあることによってずれている場合 【4】左右の顎の関節レベルでずれている(片側の関節の吸収や変形)場合です。正貌の写真からは2の骨格的な変形が存在するかを診断します。この患者さんは下あごが変形しているのがわかります。 |
■ レントゲン写真4(ハンドリスト) |
![]() |
■ CT写真(顎関節) |
![]() |
■ 歯の模型 |
![]() 上下の歯列の型を採ることによって歯の模型を作ります。この模型を咬合器に付着することによって、患者さんの顎の動きを忠実に再現することができます。この咬合器に付着された模型を使うことによって歯の位置や顎の大きさ、顎の関節の動きなどを診断します。 ●口腔内診査 ●問診 以上の資料や診査したことから、歯並びが悪いことの原因がどこにあるのかを診断していきます。装置をつければ歯は動きますが、原因が排除できていなければ歯は必ず元の位置に戻って(後戻り)しまいます。これらの資料は矯正治療の方針を決定する上で最低限必要なものと考えております。 |
歯を抜くのか抜かないのかという基準は?
患者さんの立場からすれば、抜かないで治してほしいと思うのは当然だと思います。でも考えてみてください…
たとえばここに8人がけの椅子があったとします。10人座ろうとすれば二人はひざの上に座らなければなりません。きれいに座らせようとしたら、もっと幅の広い椅子を持ってくるか、二人どいてもらうしかありません。 幅の広い椅子を持ってくる、顎で考えれば顎の幅を横や前に拡大する。
これが歯を抜かないで治す方法ですが、拡大にも限界があります。横に広げすぎれば頬側の歯肉が下がってしまったり(歯肉退縮)前に広げすぎれば口元が出っ歯になったりします。歯並びはきれいになったが口元が出てしまった。これは専門医としては避けたい状況です。口元も含めた審美的な改善は、咀嚼機能の回復の次に重要な要素だと思っております。そのような時は歯を間引くことによって、そのスペースを利用してほどく方法がとられます。これが抜いて治す方法です。その他上あごが前にずれていたり(上顎前突)、下あごが前にずれている場合(下顎前突)、歯の移動でそのようなずれを治すことが可能であれば、前歯を中に入れるため歯を抜くという方法がとられます。
手術を併用する場合の基準は?
たとえば上あごに対して下あごが大きいことによって前歯が反対に咬んでいたり、または下あごが小さい(後ろにずれていて)ことにより出っ歯になっていたり、また顔を前から見て下あごが上あごに対して左右にずれていたりといった、顎の骨の大きさや位置的なずれが伴う時は、歯の位置の改善のみでは咬み合わせが作れないので手術を併用します。手術は全身麻酔で、口腔外科医(大学病院)と連携して行います。
矯正治療は患者さんによっては長期に及ぶ場合もあります。それゆえに担当歯科医師との信頼関係が重要です。私たちは上記のような治療方法で対処し、長く健康的な口元を維持してほしいと思っています。