矯正治療の考え方|シライ矯正歯科クリニック|山梨県大月市

矯正治療と聞くと歯並びをきれいにすると連想される方も多いでしょう。しかし実際には「歯の本来持つ機能を正常に治す=歯並びをきれいにする」と置き換えられます。ここでは当院が矯正治療を行うにあたって大切に考えていることをご説明していきます。


正確な診断のための資料

矯正治療は患者さんそれぞれのお口の状態に合わせた診断が必要です。そのためには事前にしっかりとした診査を行う必要があります。

レントゲン写真1(パノラマ)
このレントゲンから歯の数を診断します。もともとない歯(先天性欠如)や余分な歯(過剰歯)がないかをチェックします。このような歯があると正しい位置に歯が出てこられない原因になります。この写真では丸のところに永久歯がありません。また子供の場合は歯の萌出状況もチェックします。

レントゲン写真2(側貌セファロ)
顎の位置関係を診断します。たとえばこの写真のように前歯が反対に噛んでいる人であれば、その原因が頭の位置に対して下あごが前に位置していることによるものか、上あごが後ろに位置しているからなのか、上下の顎の位置には問題がなくて上下の歯の傾きが悪いことによるものかを診断するのです。

レントゲン写真3(正貌セファロ)
顎の左右の対称性を診断します。たとえば上下の歯の正中がずれている原因は4つあります。
【1】歯の位置的な問題でずれている場合
【2】下あごや上あごの骨が変形している場合
【3】下あごが噛んでくる動作の中で、歯が不正な位置にあることによってずれている場合
【4】左右の顎の関節レベルでずれている(片側の関節の吸収や変形)場合です。正貌の写真からは2の骨格的な変形が存在するかを診断します。この患者さんは下あごが変形しているのがわかります。

レントゲン写真4(ハンドリスト)
骨年齢(骨の成熟度)を診断します。女の子で12才、男の子で14才に思春期成長のスパートが来るといわれております。同じ歳でも大きい子や小さい子がいるように、子供の成長は個人差があります。そのため骨の成熟度を見ることにより成長のスパート時期をみるのです。実際の年齢よりも骨年齢が若い子もいれば進んでいる子もいます。成長が残されていて成長によって骨格が悪くなるようであれば、(たとえば反対咬合で下あごが前に成長してくる場合)治療は成長が終わるまで待たなければなりません。

CT写真(顎関節)
矯正治療の目標の一つに機能的な咬み合わせと顎関節があります。このかみ合わせの基となる部分が顎関節です。この顎関節の正確な状態を把握するために最新の歯科用CT撮影装置を使って、顎関節を撮影いたします。


歯の模型

上下の歯列の型を採ることによって歯の模型を作ります。この模型を咬合器に付着することによって、患者さんの顎の動きを忠実に再現することができます。この咬合器に付着された模型を使うことによって歯の位置や顎の大きさ、顎の関節の動きなどを診断します。

●口腔内診査
上唇小帯(うわくちびるの真ん中のひだ)や舌小帯(舌の真ん中のひだ)、舌の大きさ等の異常がないか、また嚥下の仕方に問題がないか等を診査します。

●問診
過去の病歴や既往歴、また悪習癖(頬杖、指しゃぶり、咬唇癖、咬爪癖)等がないかを診査します。

以上の資料や診査したことから、歯並びが悪いことの原因がどこにあるのかを診断していきます。装置をつければ歯は動きますが、原因が排除できていなければ歯は必ず元の位置に戻って(後戻り)しまいます。これらの資料は矯正治療の方針を決定する上で最低限必要なものと考えております。

 

矯正治療の目的・方法

矯正治療の目的は口元の見た目を良くする(審美性)・凸凹を治し歯ブラシしやすくする(衛生性)・よく噛めるようにする(機能性)等があげられます。 私たちは診断をもとにこれらの要素を満たした治療を行っていきます。そして矯正治療にはおもに次の3つの方法があります。

【1】歯を抜かないで行う方法。
【2】歯を抜いて行う方法。
【3】顎の手術を併用して行う方法。


歯を抜くのか抜かないのかという基準は?

患者さんの立場からすれば、抜かないで治してほしいと思うのは当然だと思います。でも考えてみてください…
たとえばここに8人がけの椅子があったとします。10人座ろうとすれば二人はひざの上に座らなければなりません。きれいに座らせようとしたら、もっと幅の広い椅子を持ってくるか、二人どいてもらうしかありません。 幅の広い椅子を持ってくる、顎で考えれば顎の幅を横や前に拡大する。
これが歯を抜かないで治す方法ですが、拡大にも限界があります。横に広げすぎれば頬側の歯肉が下がってしまったり(歯肉退縮)前に広げすぎれば口元が出っ歯になったりします。歯並びはきれいになったが口元が出てしまった。これは専門医としては避けたい状況です。口元も含めた審美的な改善は、咀嚼機能の回復の次に重要な要素だと思っております。そのような時は歯を間引くことによって、そのスペースを利用してほどく方法がとられます。これが抜いて治す方法です。その他上あごが前にずれていたり(上顎前突)、下あごが前にずれている場合(下顎前突)、歯の移動でそのようなずれを治すことが可能であれば、前歯を中に入れるため歯を抜くという方法がとられます。

手術を併用する場合の基準は?

たとえば上あごに対して下あごが大きいことによって前歯が反対に咬んでいたり、または下あごが小さい(後ろにずれていて)ことにより出っ歯になっていたり、また顔を前から見て下あごが上あごに対して左右にずれていたりといった、顎の骨の大きさや位置的なずれが伴う時は、歯の位置の改善のみでは咬み合わせが作れないので手術を併用します。手術は全身麻酔で、口腔外科医(大学病院)と連携して行います。

矯正治療は患者さんによっては長期に及ぶ場合もあります。それゆえに担当歯科医師との信頼関係が重要です。私たちは上記のような治療方法で対処し、長く健康的な口元を維持してほしいと思っています。

矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について

  • 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間~1、2 週間で慣れることが多いです。
  • 歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性があります。
  • 装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
  • 治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まりますので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと 隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。
  • 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
  • ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
  • ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
  • 治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
  • 治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあり ます。
  • 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
  • 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
  • 矯正装置を誤飲する可能性があります。
  • 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
  • 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
  • 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
  • あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
  • 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えてい る骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になる ことがあります。
  • 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。
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